愛すべき誰かの為に

夢を見た
なぜだか、僕にはそれが夢だと分かっていた
見慣れた町並みに、なんの変哲もない、いつもの雑踏

足音
クラクション
僕の周りに溢れる、街を包む空気に溶け込み、どこまでも広がっていくたくさんの音
僕はそれを、なにを感じることもなく聞いていた
立ち止まり、人の流れを断ち切って
一瞬淀んだ流れは、僕の立つ不可侵な空間だけを避け、はじめからそうであったかのように、緩やかな動きを取り戻す
僕は、涙を流した
誰の為なのか、なんの為なのか
生まれた場所の分からない涙は、僕の心にわずかな歪みを残して、この身体からその身を投げた

目が覚めた
それが現実であると理解するまで、僕は少しの時間をかけた
見慣れた町並みに、なんの変哲もない、いつもの雑踏

足音
クラクション
僕の周りに溢れる、街を包む空気に溶け込み、どこまでも広がっていくたくさんの音
僕はそれを、微かな寂しさを感じながら聴いていた
立ち止まり、人の流れを断ち切って
一瞬淀んだ流れから、一つの姿が浮かび上がった
僕の立つ不可侵なはずの空間に、なんの躊躇いもなく入り込む
僕は、笑顔をこぼした
誰の為なのか、なんの為なのか
向かうべき場所を知っている笑顔は、僕の心に大きな温もりを残して、この身体から飛び立った

そして僕は、「僕が僕である意味」を知った



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